大判例

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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)164号 判決

而して被控訴人の提出、援用にかかるすべての証拠によつても、未だ被控訴人主張のように、昭和三十八年八月十日頃被控訴会社と訴外森田久二との間において特約店契約が成立した際、同人の負担すべき右契約上の債務につき、控訴人がその連帯保証(根保証)をしたものと断ずることは困難である。

然しながら、成立に争のない甲第十三、十四号証、同第十五号証の一、二原審証人中井泰之、同羽富智恵子の各証言により真正に成立したものと認められる同第十一号証、同第二十号証の各記載、右各証人、原審証人岩山正芳、同園田たきのの各証言、原審並びに当審における控訴本人の尋問の結果(但し後記採用しない部分を除く。)に同第一号証および同第十二号証(いずれも「特約店契約書」と題する書面であるが右各号証中控訴人関係以外の部分が真正に成立したものであることは前記証人中井泰之、同羽富智恵子の各証言により明らかである。)の存在を綜合して考察すれば次の事実が認められる。即ち、森田電気の商号で電気器具店を経営する訴外森田久二が昭和三十八年八月十日頃被控訴会社との間においてその主張の如き内容の特約店契約を締結した際、連帯保証人を立てることを必要としたところから、右森田久二は叔父である控訴人の妻園田たきのから他から金五万円を借受けるのにその保証人となつて貰うために必要であるとして、同女の保管していた控訴人の印鑑(実印)を借り受けた上、被控訴人との間の特約店契約書三通(甲第一号証はそのうちの一通)の各連帯保証人欄に控訴人の住所氏名を記入してその名下に前記控訴人の印鑑を押捺し、控訴人の印鑑証明書とともにこれを被控訴会社に交付したこと、被控訴会社では事故防止の目的から前記特約店契約書の作成が真意に基づくものであることを確かめるため、特約店契約書たる前記森田久二並びに連帯保証人たる控訴人の保有すべき「特約店契約書」を送付することにし、同年十月五日特約店契約書」に被控訴会社代表取締役瀬谷藤吉の氏名を記入し、これに被控訴会社印および代表取締役の印を押捺した上、保証人として調印したことを謝する旨を記載した「特約店契約書拝送の件」と題する書面をも同封して控訴人宛てに郵送したところ、控訴人はその頃これらの書面を受領し、控訴人が前記森田久二と被控訴会社との間の前記特約店契約上の連帯保証人とされていることを知りながら、被控訴会社に対して何らの意思表示をしなかつたので、被控訴会社では控訴人との間にその連帯保証契約が有効に成立したものと信じていたこと、その後被控訴会社の社員と出会つて話をする機会がありながら控訴人はあえて自己が連帯保証人になつたものではない旨の申出をしなかつたこと、また昭和三十九年九月中旬頃前記森田久二が倒産してゆくえをくらましてしまつた後において、被控訴会社からめぼしい財産の仮差押を受けた際ですら、控訴人は連帯保証人にはなつていない旨を主張して被控訴会社の右仮差押執行に対して厳重抗議をすることをしなかつたのみならず、取引残高確認と債権徴収のため、被控訴会社員岩山正芳が控訴人らの居住する真壁町に出張して来た際、控訴人は前記森田久二の妻すいとともに右岩山正芳をその宿舎橋本旅館にたずねて行つたのであるが、その際においても、控訴人は前記特約店契約の連帯保証人になつていない旨を主張しなかつただけではなく、却つて右森田久二の債務の支払方法について相当時間会談したこと以上の事実が認められる。原審証人森田すいの証言、原審並びに当審における控訴本人の供述中右認定にそわない部分は前掲各証拠と対照して採用し難く、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

(控訴人は原審並びに当審における本人尋問の際において、被控訴会社から「特約店契約書」の送付を受けた際直ちに森田久二方に赴いて同人に対し、連帯保証人として押印したことがないから取消して貰いたい旨を要求したところ、同人もこれを確約したので控訴人の連帯保証は取消されたものと思つていたから、被控訴会社に対しては何らの意思表示をしなかつた旨弁解し、また原審証人森田すいもこれにそう証言をしているのであるが、当審における控訴本人の供述によつても、森田久二は信用のおけない男であるというのであるから、同人のために勝手に連帯保証人にさせられてしまつた控訴人としては、森田久二が取消を確約したから取消されたものと思つていたとしてそれ以上何ら取消を確認する処置をとらなかつたというは納得が行かないだけでなく、既に認定したように森田久二のゆくえが判らなくなつてから後において被控訴会社の社員との間で森田久二の債務の支払方法につき相当時間会談した事実から考えれば控訴人が森田久二に対して連帯保証の取消を要求したということさえも軽々にこれを信ずることができない。)

以上説示したところに徴すれば、控訴人は前記森田久二が無権限で控訴人の実印を使用して署名代理の方法により控訴人の代理人として被控訴会社との間の本件特約店契約につき連帯保証をしたことを知りながら、右無権代理行為を暗黙のうちに追認したものと解するのが相当である。

(奥野 野本 真船)

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